ヒロ研 Hiro Lab. ニューラルネットワーク


もどる

1 - スパイキングニューロンモデルとは


作成:2018/06/28 (Hiroshi Araki)


スパイキングニューロンモデル(Spiking Neuron Models)はニューロンモデルの中ではマイナーではあるが、その潜在的可能性を信じて研究している人はたくさんいます.
この番外編では、スパイクニューロンモデルについて中心に解説します.この章ではスパイキングニューロンモデルにおいて基本的な考え方を解説していき, 2章ではその中でもメジャーなLIFモデルの考え方について解説します.僕自身もこの記事を書いている現在,スパイクニューロンモデルを学習中な身であるので,更新頻度は未定です.
ごめんなさいm(_ _)m

まずは,実際の生物の神経細胞の働きから復習していきます.



1.1 生物の神経細胞(復習)


神経細胞については,第1回で説明しているので色々と端折り,大事な部分だけピックアップして解説します.

以下復習ではあるが,図1で示すのは脳の「神経細胞(neuron)」です. この神経細胞同士が大量に接続されて「神経回路網(neural network)」を構成されています.



図1, 脳の神経細胞



図1でいうと,神経細胞同士は樹状突起と軸索の間にある小さな隙間「シナプス(synapse)」によって情報を伝達しています. つまり,軸索が出力部で,樹状突起が入力部と考えてよいでしょう.

では,神経細胞において何が情報を担っているのでしょうか?

答えは「電気パルス(pulse)」です.電気パルスとは電位を持ったスパイク(spike)上の波のことで,図2のようなトゲのような形をしています.



図2, 電気パルスのスパイク上の電位変化
(引用:http://nonatonic.hatenablog.com/entry/2017/11/25/005515)


ここからがスパイキングニューロンモデルにおける重要ポイントです.

この電気パルスは電位を持っているので,この電位が情報を担っていると勘違いしそうですが,実はそうではありません.


神経細胞における情報とは,電気パルスの発生頻度,発生タイミングが情報を担っていると考えられています.


言い換えると,情報はあるタイミングに電気パルスがあるかないか (1か0)なのです.これはコンピュータが2進数の情報表現をしているのと大差ありません.

そう考えると,今まで扱ってきたニューロンモデルが如何に本来の神経細胞と違う挙動をしていたかわかります.(笑)


ここからは復習ですが,神経細胞はスパイクを発生させる条件として,膜電位が閾値を超えたとき というものがあります. なので,今回も膜電位の有無と閾値の有無は重要な要素になってきます.

他に重要な要素は不応期でしょう.不応期とは,スパイクを発生させた後にしばらく膜電位を上昇させない時間のことです. これは時間変化が関係あるスパイク発生タイミングを考える上で重要な要素です.



さて,ここまでで重要な要素は書きました.今回のスパイクを考慮したモデルにおいて重要な点は以下の5つです.


  1. 膜電位をもつ
  2. 膜電位が上昇しない不応期を持つ
  3. 閾値があること
  4. スパイクの発生タイミングを情報とする
  5. シナプス可塑性(これは形式ニューロンでも重要な部分でした)


以上の5つを,頭に入れておいてください.



スポンサーリンク



1.2 神経細胞のモデル化


さて以下の5つを考慮した神経細胞モデルを考えていきます.


  1. 膜電位をもつ
  2. 膜電位が上昇しない不応期を持つ
  3. 閾値があること
  4. スパイクの発生タイミングを情報とする
  5. シナプス可塑性


まず,スパイキングニューロンモデルの基本的な考え方を図式化してみます.図3は単純に2つの入力を受け取るニューロンを考えています. そしてスパイクが到達したと同時にどのように膜電位が変化していくか,またどのタイミングでスパイクが発生したかに注目してみてください.

また,ここでは$u_i(t)$はニューロン$i$の膜電位,$t^{(f)}_{j}$は$j$番目の前層ニューロンが出力したスパイク列の$f$番目スパイクタイミングを指す.
$u_{rest}(\simeq-70[mV])$は静止電位で,$\theta(\simeq20[mV])$は発火閾値である.


Spiking Neuron Model
(a), なにもスパイクが到達していない


Spiking Neuron Model
(b), 時刻$t^{(1)}_1$になりスパイクが到達した


Spiking Neuron Model
(c), 時刻$t^{(1)}_2$になりスパイクが到達した


Spiking Neuron Model
(d), 時刻$t^{(2)}_1$になりスパイクが到達した


Spiking Neuron Model
(e), 時刻$t^{(2)}_2$になりスパイクが到達した. またこのタイミングで膜電位$u_i(t)$が発火閾値$\theta$を超え,ニューロン$i$からスパイクが生成された.



図3, スパイキングニューロンモデルの基本的な考え方



このような一連の流れをっ単純に式にするらば,スパイクが到達したときに,一定量膜電位をあげるような式にすればよさそうである.

と,言いたいところだが,そんなに単純な話ではない.

実際は一つのニューロンに1000個近くのスパイク列が入力されることがある,ということを考えると,膜電位を静止電位に戻してもすぐ発火してしまいそうである.



スパイキングニューロンモデルにおいて,この膜電位の計算方法はとても大事で,この計算方法でいろんな細かなモデルに分かれます.
その中でも有名でよく使われているLIF (Leaky integrate-and-fire: 漏れ積分発火)モデルについて解説します.




2 - Leaky integrate-and-fire(LIF)モデル

につづく



あとがき


ここまで読んでいただきありがとうございました.
今回用いた参考文献はトップページでも紹介されている,Spiking Neuron Models: Single Neurons, Populations, Plasticity - Werner Kistler, 2002 Cambridge University Press - です.

2002年出版と少し古い書籍ですが,基礎の基礎から丁寧に解説されているので良かったら読んでみてください.ただし英語で書かれていますのでご注意を...




スポンサーリンク


このエントリーをはてなブックマークに追加